ヴェズレーの教会と丘　（ブルゴーニュの旅）

「ヴェズレーの教会と丘」はユネスコの世界遺産に登録されている「フランスのサンチアゴ・デ・コンポステーラの巡礼地」です。その丘の上にそびえるのがサント＝マドレーヌ教会、エクス＝アン＝プロヴァンス郊外のサン＝マクシマンからマグダラのマリアの聖遺物を持ち帰り、地下納骨堂に納めたという伝承で多くの巡礼者が訪れます。教会にたどり着くまでの道に巡礼のシンボルのホタテガイのメダルが埋め込まれています。

ヴェズレーはとても静かな小さな村です。坂のふもとにはブルゴーニュ名物のグジェールやテリーヌが売っている小さなパン屋さんがあり、巡礼の人たちも立ち寄っています。入口には巡礼者の大きなリュックが置いてあります。また、着物の生地の小物や浜文様の手ぬぐいなどを扱うショップの気さくなフランス人オーナーが切り盛りする楽しいサロン・ド・テもあります。儀式のようにキャンドルに火を点け、色とりどりの砂時計をひっくりかえし、「はい、あなたの紅茶は緑の砂が落ちたら飲んで！あなたはピンクね！」とにこやかにサービスしてくれます。なぜかお茶請けは羊羹です！坂を上ると日本では簡単に手に入らないヴェズレー・ワインが安く手に入る小さなワイン屋があり、笑顔が素敵な店長さんが珍しいオーガニック・ワインをいくつか試飲させてくれました。教会内部を見学するのはもちろんのこと、教会の裏の見晴らし台からヴェズレーの幻想的な田園風景をご覧になることをお勧めします！

教会入口のティンパヌムはロマネスク彫刻の傑作と言われていますが、残念ながら工事のため私は見られませんでした。そのかわり、年に1度のフランスのローマ・カトリック・スカウティングの集会の日だったらしく、夜は松明を持って歌を唄いながら教会に入る姿を見れたり、聖歌の練習を聴けたりました。ひざまづいて祈る姿が、キリスト教がいまだに一部のフランスの若者の精神に根付いていることを物語っています。マグダラのマリアの聖遺物が祭られているとされる祭壇の前にも、ひざまづく若者が。教会は祈りの場所です。さすがに割り込んで聖遺物の写真を撮る勇気はありませんでした。

1279年に持ち出されたはずの聖遺物がもとのサン＝マクシマンで見つかり、ローマ教皇が正式に認めたため、こちらは１片があるのだとか、その真偽のほどが問われることになったようですが、サント＝ボームの洞窟であろうが、ルーブル美術館の逆さピラミッドの下であろうが、こうやって信仰を捧げる人々にとっては確かにマグダラのマリアは“今、ここに存在”しているようです。